中小企業の事業承継対策 第5回
自社株買い(金庫株)の活用

事業承継や相続対策における解決方法の一つとして、金庫株(自社株買い)がある。特に相続税の納税資金捻出や、MBO・MBIといったバイアウトスキームを用いた事業承継対策によく用いられる。

金庫株とは、発行会社自身が取得した自社株のことであり、平成13年度商法改正で、自社株の取得と保有が、剰余金の分配可能額の範囲内であれば、原則自由となった。

相続財産の大半が自社株である場合や退職した役員等経営に無関係の株主の死亡により、別の者に相続された場合などには、自社株取得は非常に有効な方法となる。

優良な非上場会社の場合には、創業者が私財の大半を会社に投入していたため、財産の大部分が自社株でその株価が当初出資額の何十倍・何百倍に高騰しているケ―スは決して少なくはない。

相続人が複数の場合や外部株主がいる場合には、後継者の経営権確保が最優先課題となる。できるだけ、後継者が自社株の全部を取得し、その他の相続人にはそれ以外の財産を相続させるべきである。この場合、相続財産が著しく不足することが想定されるで、その代償として、後継者が現預金を交付して分割問題の調整を図ることもできる。(代償分割)

また、現預金が不足する場合には、相続した自社株を会社に売却し、その代償交付金や相続税の納税資金に充てることを検討する。

後継者がいない場合には、最近活発になっているMBO又はM&Aなど外部への事業譲渡も視野に入れて対応すべきであろう。

発行会社に自社株を売却した場合には、証券市場等からの購入、事業全部の譲受け、合併、分割又は現物出資による移転などを除き、原則として譲渡益の大半が配当とみなされ、高額所得者では最高で43.6%の所得税等が課税されるので注意が必要である。

ただし、平成16年度税制改正により、非上場株式を相続した相続人が、相続税の申告期限から3年以内に、会社に自社株を売却した場合には、譲渡所得の20%分離課税とされ、また、相続税のうち、譲渡株式に対応する部分を取得費に加算して譲渡益の計算ができるようになっているので、併せて検討したいところだ。 

この記事は 2009年 7 月 8日(水曜日) に投稿されました。
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