~変革の時~ 
金融機関における事業承継セミナー開催

本日14時より、福岡銀行及び福岡中央銀行主催のセミナーにコーディネーターとして参加した。テーマは、「中小企業経営者のための事業承継セミナー」であった。同金融機関は、事業承継の支援にとても積極的で様々な取組みを行っており、本日の受講者も百名を大きく超え、大盛況であった。同金融機関の信用力と事業承継問題に対する関心の高さを再認識させられた。

前段の部は、トーマツコンサルティング株式会社の公認会計士藤嶋氏が講演を行った。テーマは、「経営の原理原則を実践して適切・円滑な事業承継を」であった。事業承継対策は、継続企業を前提とした場合には、最優先事項であるにも関わらず、十分な対策がなされている中小企業は少ない。藤嶋氏は、一般的に行われている自社株等の節税対策より、事業そのものの競争優位性の維持、つまり経営承継が最も重要であると力説されていた。まさに原理原則の事業承継対策の説明で、同業者として非常に勉強になった。

事業承継とは、会社経営を次の世代にバトンタッチすることで、「ヒトの承継」と「資産の承継」といった二つの側面が考えられる。前者は、経営者の資質の見極めや能力開発等を目的とし、後継者選びと教育及び経営理念等の継承対策が必要となる。後者は、経営権・支配権の確保が目的となり、事業用資産の継承、特に自社株の集中などの対策が必要となる。また、その株式購入や納税資金等の資金調達の対策も不可欠である。
事業承継は相続税対策と見られがちであるが、相続税対策は事業承継対策の一部に過ぎない。事業承継の最も重要な目的は、事業と雇用の継続性を確保することである。会社が安全に継続できるためには、後継者の資質やスキルに帰属する部分が大きい。また、現経営者に集中した信用力、営業力やノウハウ等を組織的に承継させることも重要な課題となる。
相続対策に偏重した対策は、会社の継続性を脅かすことになるので特に注意が必要だ。

事業承継対策は、分業の度合、つまり権限委譲の程度により大きく影響される。創業者に集中した機能を後継者に円滑に承継させなければならないが、個人的企業では、営業や信用を含め、会社の重要な機能のほとんどが経営者自身に集中していることが多いため、事業承継を行うことは容易ではない。そこで一定規模以上の事業承継対策では、できるだけ早い時期から現経営者の有している機能の一部を他者に移転させ組織化を図り、後継者は戦略的意思決定中心で会社が運営できる状態を構築していくことが必要となる。経営者は、事業や雇用を安全確実に継続させていくを優先させ、親族内承継に固執せず、所有と経営の分離を前提とした承継や、従業員等へのバイアウトまたはM&Aも選択肢となりうることを肝に銘じておくべきであろう。

後段の部は、「事業承継を実践された社長の体験談」をテーマにパネルディスカッションを実施した。筆者は、コーディネーターを務めさせていただいた。

まず、親族内承継を実践した五洋食品産業株式会社の舛田社長に事業承継の経緯やエピソード、経営課題等について質問を行った。舛田社長ご自身の生々しい体験談に、多くの受講者が固唾を呑んで聴き入っていたのが印象的だった。

次に、昨年度、事業承継ファンドが投資した三原機工株式会社の中村社長に、外部の方が入ることで最も留意したことや経営上の課題等について質問を行った。いわゆる親族外承継であるが、承継当時の苦労話や社内融和のためにとった施策など興味深い話に、受講者のほとんどがとても真剣な眼差しで聴いていた。近年、バイアウトの事例は増加傾向にあり、弊社でも相談が絶えない。親族内に適切な後継者がいない場合には、ぜひ、銀行等の担当者に相談することをお奨めしたい。

今回、パネラーとして参加した福岡銀行、福岡中央銀行、日本プライベートエクイティの方々の話術、高いスキルや優秀さには、大変感銘させられた。筆者も負けないようスキルアップしていきたい。また、このセミナーのように、事業承継を実践した社長の体験談を深くお聴きする機会が、これまでほとんどなかったので、今後の事業展開の参考にしていこうと思う。

この記事は 2009年 10 月 19日(月曜日) に投稿されました。
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