消費税還付スキームに対する規制強化

商工会議所NEWSの平成22年4月号税務Q&Aに「消費税還付スキームに対する規制強化」が掲載されましたのでご紹介します。

Q 平成22年度税制改正で、消費税の還付スキームに対する規制強化が図られたそうですが、その内容を教えて下さい。

A 消費税の免税事業者が課税事業者を選択した場合等において、百万円以上の調整対象固定資産の仕入れ等を行ったときは、その仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については事業者免税点制度が適用できないとするなどの改正が行われました。この見直しは、仕入控除税額の調整措置の適用回避を狙ったいわゆる「自動販売機スキーム」などへの対応を念頭に置いたものですが、意図的に多額の仕入税額の還付を受け、調整措置を回避しようとする者でなくとも適用がありますので、設立後2年以内に調整対象固定資産を購入する場合などは、特に注意が必要です。消費税の実務では、従来から各種届出書の提出に関連したミスが大変多いだけに、今後更なる管理が必要となるでしょう。

1 改正前制度の概要

(1) 事業者免税点制度
事業者のうち、その課税期間の基準期間における課税売上高が1千万円以下であるものについては、事務負担等を考慮して納税義務が免除されています。ただし、新設法人など基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金が1千万円以上である法人については、その基準期間がない事業年度については納税義務免除の規定は適用されないことになっています。
なお、免税事業者が、「課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出した場合には、その届出書の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間以後の各課税期間は課税事業者とされます。その後、課税事業者をやめようとするときは、「課税事業者選択不適用届出書」を所轄税務署長に提出する必要がありますが、課税事業者選択届出書を提出した翌課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出できないこことなっており、最低2年間は課税事業者となります。

(2) 簡易課税制度
事業者のうち、基準期間における課税売上高が5千万円以下である事業年度(基準期間がない場合も含む。)において、前課税期間末まで(新設法人等の場合には、その課税期間末まで)に、「簡易課税制度選択届出書」を提出しているときは、控除対象仕入税額の特例として簡易課税制度が適用されます。この制度は、中小事業者の事務負担を考慮し、課税売上高のみから納付する消費税額を算出することができるようにしたものです。
※ 基準期間とは、個人事業者は前々年、法人は、原則として、前々事業年度をいいます。

(3) 課税売上割合が著しく減少した場合の消費税額の調整
事業者が、調整対象固定資産の課税仕入れ等を行い、その控除対象仕入税額につき比例配分法により計算している場合において、第3年度の課税期間の末日において調整対象固定資産を保有しており、かつ、通算課税売上割合が仕入れ時の課税売上割合に比し著しく減少しているときは、その減少部分に対応する一定の金額を第3年度の課税期間の仕入れに係る消費税額から控除することにより調整することとなっています。
しかし、その第3年度において、免税事業者又は簡易課税適用事業者である場合は調整対象から除外されることを利用して、消費税における非課税売上高が大半である事業者、例えば住宅の貸付を行う不動産業者などにおいて、前述の消費税還付スキームが横行していました。
※ 第3年度とは、仕入れ等の課税期間開始の日から3年を経過する日の属する課税期間をいいます。

2 税制改正の内容

消費税の課税の適正化の観点から、調整対象固定資産の仕入れ等に係る仕入控除税額が過大であった場合に減額する調整措置の対象となるよう次の見直しが行われました。結果として、下記(1)に掲げる各期間中に調整対象固定資産の仕入れ等を行ったときは、課税売上割合が著しく減少した場合の第3年度における消費税の調整措置を回避することができなくなりました。

(1) 事業者免税点制度の適用の見直し
次の期間(簡易課税制度の適用を受ける課税期間を除きます。)中に、調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合には、その仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、引き続き事業者免税点制度が適用できないこととされました。調整対象固定資産の仕入れ等の時期によっては、4年間免税事業者に戻れないケースも生じますから、特に注意が必要です。
① 課税事業者を選択することにより、事業者免税点制度の適用を受けないこととした事業者の当該選択の強制適用期間(2年間)
② 資本金1千万円以上の新設法人につき、事業者免税点制度を適用しないこととされる設立当初の期間(2年間)
(注1)上記の改正は、①に該当する場合には平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した事業者の同日以後開始する課税期間から、②に該当する場合には同日以後設立された法人について適用されます。
(注2)調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で百万円(税抜き)以上のものをいいます。

(2) 簡易課税制度の適用の見直し
(1)により、引き続き事業者免税点制度が適用できないとされた課税期間については、簡易課税制度の適用を受けられないこととされました。

この記事は 2010年 4 月 8日(木曜日) に投稿されました。
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