~変革の時~
金融機関共催事例研究会

本日17時より、某金融機関と共同で事例研究会を実施した。
今回のテーマは、前半は事業承継事例につき討議を、後半は「非上場株式等の株価評価の概要」について解説を行った。

同金融機関は、会社の事業承継・経営合理化などの問題・課題解決について積極的に提案を行っており、当研究会では情報交換を兼ねて、様々な事案や提案について活発な議論を重ねている。

まず、実際の事業承継事例について、既に回収できている資料を基に、マインドマップを使って、グループ会社概要、親族図、関係者、事業用資産、組織、ビジネスモデル及び財務状況等を俯瞰した。それから、円滑な事業承継の実施と確実な事業継続を図ることを想定して協議を行った。プロジェクターにて可視化することにより、参加者の発言が活性化され、積極的な議論が展開された。

今回の事例は、製造業を営む優良な中小企業であったが、株式の生前贈与や事業の分社化など節税に主眼が置かれた各種対策が既に実行されていた。実際に数多い事例であるが、短絡的で中長期的・戦略的な視点に欠けた対策であると想定された。

企業は、社会貢献の見地から、付加価値のある事業と雇用の継続を最優先し、グループを含む事業形態や内部統制等の最適化・簡便化、後継者教育や関係者の利害調整などを重視しなければならない。また、株式はできるだけ後継者に集中し、経営を安全確実に掌握できるような配慮が必要である。当該事例では、節税目的が重視され過ぎているためか、戦略的な視点が完全に欠落しているように思われた。現在のような不確実で厳しい経済環境下では、経営者は持続的な付加価値の創造と企業継続に集中しなければならない。事例のように不必要な株式の分散や分社化などは、早急に是正し環境適応に専念する必要があるだろう。

次に、非上場株式等の株価評価の概要について解説した。その算定方法には、収益方式、純資産方式、比準方式及び国税庁方式がある。M&A等の際には、収益方式のうち、DCF方式を加味することが多いが、同族関係者間の取引では、税務リスク回避のために国税庁方式が採用されるケースがほとんどである。
DCF方式は、フリー・キャッシュ・フローを基に算定するが、営業利益ベースで算定する方法とキャッシュ・フロー計算書を用いる場合などがある。また、割引率はWACCにより算定することが多いが、営業利益等を含め多くの仮説を基に判断算定していくため、決算書や事業計画・内部統制等の精度の低い中小企業において採用しづらい側面は否定できない。

国税庁方式によると非上場株式等の株価は、その取得の態様に応じて評価方法が異なってくることになる。特に、原則的評価方式と特例的評価方式(配当還元価額方式)で著しく評価額が乖離することは珍しくない。
原則的評価方式には、純資産価額方式、類似業種比準価額方式、純資産価額と類似業種比準価額の併用方式があるが、採用される評価方式は、取得後の議決権比率や会社規模(大会社・中会社・小会社)により異なるので、企業防衛の観点から、自社がどの区分に該当し、どの評価方式が採用されるのか、それが評価上有利なのかどうかを判断し、適切な対策を講じる必要がある。

なお、個人対個人の取引の場合において、取得後の議決権比率が相対的に低いときは、配当還元価額方式がとれるが、取引の当事者に法人が入るケース(個人対法人、法人対個人、法人対法人)では、原則として当該方式は採用できない。このようなケースでは、法人側に受贈益課税、寄付金課税及び役員賞与課税等が、個人側に給与課税、一時所得課税及び配当課税等のリスクが生ずることになり、法人税法上の時価(法人税基本通達9-1-13)を加味しなければならないこととなる。そのため、実際の株価算定では、税務リスク回避の観点から、法人税基本通達9-1-14における小会社方式を採用することが多い。

この記事は 2010年 5 月 26日(水曜日) に投稿されました。
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