~変革の時~
YCAビジネススクールⅢ 第25回

本日10時より、YCAビジネススクールⅢが開催された。

前段は、昨日開催された経済アナリスト藤原直哉氏のセミナーの内容を基に、現在の経済環境とその行方について討議を行った。特に、アフリカを中心に起きているデモが、中国を始めとする新興国に波及した場合に、我が国経済に与える影響と、今後企業がとるべき対応策について、活発な議論が交わされた。

後段は、ジャック・アタリ氏の著書「国家債務危機」の内容を説明し、今後の日本や企業が採るべき戦略について討議を行った。

著書の中でアタリ氏は、以下の「債務危機の歴史から学ぶ12の教訓」を掲げ、公的債務が激増している先進諸国に対して警鐘を鳴らしている。
① 公的債務とは、親が子どもに、相続放棄できない借金を負わせることである。
② 公的債務は、経済成長に役立つことも、鈍化させることもある。
③ 市場は、主権者が公的債務のために発展させた金融手段を用いて、主権者に襲いかかる。
④ 貯蓄投資バランスと財政収支・貿易バランス収支は、密接に結びついている。
⑤ 主権者が、税収の伸び率よりも支出を増加させる傾向を是正しない限り、主権債務の増加は不可避となる。
⑥ 国内貯蓄によってまかなわれている公的債務であれば、耐え得る。
⑦ 債権者が債務者を支援しないと、債務者は債権者を支援しない。
⑧ 公的債務危機が切迫すると、政府は救いがたい楽観主義者となり、切り抜けることは可能だと考える。
⑨ 主権債務危機が勃発するのは、杓子定規な債務比率を超えた時よりも、市場の信頼が失われる時である。
⑩ 主権債務の解消には、八つもの戦略があるが、常に採用される戦略はインフレである。
(増税、歳出削減、経済成長、低金利、インフレ、戦争、外資導入、デフォルト)
⑪ 過剰債務に陥った国のほとんどは、最終的にはデフォルトする。
⑫ 責任感ある主権者であれば、経常費を借入によってまかなってはならない。また、投資は自らの返済能力の範囲に制限しなければならない。
過去、何度も国家単位でデフォルトは起きており、歴史は繰り返されていること証明している。我が国政府も上記提言を真摯に受け止め、抜本的な構造改革と財政再建に取り組まなければならない。

また、アタリ氏は楽観主義的な主要先進国の指導者たちによって引き起こされる「最悪のシナリオ」を次のように予測している。

第一段階:国家の過剰債務が更に増大
① 急速な増加と金利上昇の懸念が拡大する。
② 逆に中国をはじめとする公的債務の対GDP比は減少する。
③ 20年後中国は日本を抜いて最大の債権国となる。

第二段階:ユーロ破綻と世界的不況
① 国家破綻の危機が高まる。
② 金利上昇による金利負担が増加する。
③ EUグループが団結して財政問題に取り組まない場合、ドイツ・オランダといった財政的に健全な国がEUを脱退し、金融機関が大打撃を受ける。
④ ヨーロッパ全体に深刻な不況と、民主主義の崩壊が起こる。

第三段階:ドル破綻と世界的インフレ
① アメリカの不動産市場の実質的な国有化などにより、ドルは機軸通貨としての地位を失う。また、国債の格付けAAAを失い、著しい金利上昇を招く。
② 公的債務削減のため、歳出削減と大幅な増税を実施する。
③ 年6%以上のインフレを選択し、ドルは他国から見向きもされなくなる。

第四段階:世界的不況から、アジアの失速へ
① 中国や日本等のアメリカに対する債権価値が大暴落する。
② 中国は、西側諸国の債務をファイナンスすると同時に自国の社会的インフラに対して投資する資金はない。
③ 中国人と日本人は、減価したドルでアメリカやヨーロッパの資産を叩き買う。
④ 西側諸国の経済・社会・政治状況は荒廃する。
⑤ 不況は世界中に蔓延する。

公的債務の対GDP比(2010年)は、主要国の中においては日本が200%と圧倒的に高い。また、今回のアフリカで起きた革命騒ぎのように世界経済では何が起こっても不思議ではない状況にあることも事実だ。仮に、赤字国債発行法案などの予算関連法案が通らなかったとしても、少しも悲観する必要はないだろう。なぜなら、抜本的な財政改革の最大の好機であり、必然的に待ったなしの状況となり、公務員改革を前提とした構造改革と歳出削減等に本気で取り組むしかないからだ。

この記事は 2011年 2 月 19日(土曜日) に投稿されました。
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