欠損金の繰越控除制度の改正

Q 法人における欠損金の繰越控除制度が改正されたそうですが、その内容を教えてください。

A 昨年12月2日に、平成23年度税制改正法案のうち未成立のまま繰り越されていた欠損金の繰越控除制度について、主として次のように改正されました。法人にとっては大変影響が大きい改正項目ですので注意が必要です。
(1) 欠損金の控除限度額の縮減
中小法人以外の法人の青色欠損金の控除限度額が、欠損金額控除前の所得の金額の80%相当額とされました。なお、災害損失金についても同様とされ、連結納税制度を選択している場合には、中小法人以外の連結親法人の連結欠損金の控除限度額が、連結欠損金額控除前の連結所得の金額の80%相当額とされました。
なお、中小法人とは、各事業年度終了の時において次に該当する法人をいいます。
① 普通法人のうち、資本金が1億円以下であるもの又は資本等を有しないもの
ただし、資本金の額が5億円以上である大法人などによる完全支配関係がある普通法人、複数の大法人による完全支配関係がある普通法人など一定の法人は除かれます。
  ※ 完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係など一定の関係をいいます。
② 公益法人等又は協同組合等
③ 人格のない社団等
(2) 欠損金の繰越期間の延長
青色欠損金、災害損失金及び連結欠損金の繰越期間が、7年から9年に延長されました。これにより、法人税に係る純損失等の金額についての更正の期限が、法定申告期限から9年に延長されました。また、法人税に係る純損失等の金額の更正の請求期限は法定申告期限から9年とされました。
(3) 帳簿書類保存要件
繰越期間の延長に伴い、一定の帳簿書類を保存していることが、欠損金の繰越控除の要件とされました。この場合の保存すべき帳簿書類は、青色欠損金額にあっては青色申告法人の帳簿書類の保存制度により作成して保存すべきこととされている帳簿書類と、災害損失欠損金額にあっては白色申告法人の帳簿及び書類の保存制度により作成して保存すべき帳簿及び書類と、連結欠損金額にあっては連結法人の帳簿書類の保存制度により作成して保存すべき帳簿書類と同様にされています。
また、保存期間は、帳簿については閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日から、書類についてはその作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日から、それぞれ9年間とされています。
(4) 適用関係及び経過措置
① 控除限度額の縮減等に関する適用関係
上記(1)の改正は、法人の平成24年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用し、法人の同日前に開始した事業年度の所得に対する法人税については、従前どおりとされています。
② 控除限度額の縮減等に関する経過措置
平成24年4月1日前に一定の事実が生じた法人の同日以後最初に開始する事業年度(以下「改正事業年度」といいます。)から更生手続開始の決定があったことなど一定の事実の区分に応じた再生計画認可の決定の日など一定の日以後7年を経過する日の属する事業年度までの各事業年度については、欠損金の控除限度額を、欠損金額控除前の所得の金額の80%相当額とせず、従来どおり欠損金額控除前の所得の金額とする経過措置が設けられました。この経過措置は、確定申告書(仮決算による中間申告書を含みます。)、修正申告書又は更正請求書に平成24年4月1日前に一定の事実が生じたことを証する書類の添付がある場合に限り適用することとされています。なお、連結欠損金についても同様とされています。
③ 繰越期間の延長等に関する適用関係
上記(2)及び(3)の改正は、法人の平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金額について適用し、法人の同日前に終了した事業年度において生じた欠損金額については、従前どおりとされています。

この記事は 2012年 9 月 10日(月曜日) に投稿されました。
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