中小企業の事業承継対策 第4回
種類株式の活用
平成18年5月に施行された会社法では、一律に規制するのではなく、大部分を各会社の自主性に任せようとする定款自治が採用され、それぞれの会社がその実情にあった運営を行うことが可能となった。その代表的な方法として種類株式が大幅に拡充され、特に利害関係の少ない中小企業における後継者問題、事業再編、内部統制や資金調達などへの活用が期待される。
弊社においても、事業承継対策や相続対策での種類株式活用を積極的に提案している。
(1) 普通株式とは?
一般的に、株式の内容について定款で何も特別な条件を設けていない株式を指す。株主は、出資の範囲内で責任を負うが、その一方で自益権と共益権といった権利を有する。
自益権には、剰余金の配当を受ける権利や解散した場合の残余財産分配権などがある。共益権には、株主総会において議決権を行使する権利、株主代表訴訟を提起する権利や帳簿の閲覧権などがある。
(2) 種類株式とは?
普通株式と比較して、定款で特別の条件、例えば権利の内容を拡大したり、縮小したりしている株式を指す。剰余金の配当・残余財産の分配を受ける権利や議決権等について制限をおくことができ、会社法では9種類の種類株式の発行を認めている。種類株式を発行等する場合には、普通株式とは異なる特別な権利や内容を予め定款で定め、当該内容を登記して公示しなければならない。
(3) 事業承継への活用例
事業承継では、後継者にできるだけ議決権を集中させる必要があることから、経営陣には議決権付株式を与え、その他の株主には議決権に制限のついた配当優先株式を渡す設計が効果的である。つまり、会社経営に口を出させない代わりに配当を優先的に支払うことで利害の調整が図れることとなる。
後継者候補が経験不足の場合には、一時的に中継ぎ経営者に取得条項付株式を持たせ、経験が備わってから株式を取得させることも有効である。
また、後継者に議決権を集中させ、拒否権付株式(黄金株)を1株のみ旧経営者が持つことにより、会社の重要事項等については、拒否権を発動できるように設計し、新経営者が成長するまでの間、監督することも可能である。ただし、黄金株は1株で会社の特定の決議を否決できるため、会社の脅威になりかねないので、相続等を想定して会社が取得できる取得条項付株式や株主の相続人に対する売渡請求制度などを併用すべきであろう。
(4) 税務上の取扱い
取引相場のない種類株式の相続税法上の評価において、配当優先の無議決権株式と拒否権付株式は普通株式として評価される。ただし、無議決権株式については議決権がない点を考慮し、一定の要件を満足する場合に納税者の選択で普通株式の評価額から5%を評価減することができ、評価減した部分は議決権株式の評価額に加算されることとなる。また、社債類似株式は社債として評価される。
*図表 種類株式の内容