~変革の時~ 
金融機関共催事例研究会

本日17時より、某金融機関と共同で事例研究会を開催した。事業承継の提案上における留意点などを中心に、活発な意見交換等が行われた。

同金融機関は、会社の事業承継・経営合理化などの問題・課題解決について積極的に提案を行っており、当研究会では情報交換を兼ねて、様々な事案や提案内容について議論を重ねている。

今回のテーマは、「事業承継における自社株買い(金庫株)の活用事例」であった。

金庫株とは、発行会社自身が取得した自社株のことであり、平成13年度商法改正で、自社株の取得と保有が、剰余金の分配可能額の範囲内であれば、原則自由となった。

親族外承継の場合において、後継者が経営権を掌握するために必要な数の株式取得資金の負担軽減を狙って、自社株買いが行われることがある。減資と同様の効果があるため、実質的な発行済株式数の減少となり、少ない資金で経営権の取得が可能となる。ただし、資金流出を伴うため、会社の安全性や継続性を考慮して実行しなければならない。

発行会社に自社株を売却した場合には、証券市場等からの購入、事業全部の譲受け、合併、分割又は現物出資による移転などを除き、原則として譲渡益の大半が配当とみなさる。6月以上保有されている親会社等(25%以上保有)からの買取りであれば、受取配当等の益金不算入により法人税が課税されないが、それ以外の法人からのみなし配当については50%相当額に対して法人税が課税されることになる。個人で高額所得者である場合には最高で43.6%の所得税等が課税される。なお、非上場会社では、いずれ場合でも20%の所得税の源泉徴収が必要となるので注意したいところだ。

個人対個人の取引の場合において、取得後の議決権比率が相対的に低いときは、配当還元価額方式がとれるが、取引の当事者に法人が入るケース(個人対法人、法人対個人、法人対法人)では、原則として当該方式は採用できない。

このようなケースでは、法人側に受贈益課税、寄付金課税及び役員賞与課税等が、個人側に給与課税、一時所得課税及び配当課税等のリスクが生ずることになり、法人税法上の時価(法人税基本通達9-1-13)を加味しなければならないこととなるため、実際の株価算定では、税務リスク回避の観点から、法人税基本通達9-1-14における小会社方式が多い。

また、個人から法人に時価の2分の1未満で譲渡した場合には、個人側にみなし譲渡課税が生ずるため、所得税法基本通達59-6により、譲渡直前の保有割合で、同族株主に該当するかどうかを判定することになるので、特に注意が必要である。

※法人税基本通達9-1-14
(注)法人が、上場有価証券等以外の株式(9-1-13の(1)及び(2)に該当するものを除く。)について「財産評価基本通達」の《取引相場のない株式の評価》の例によって算定した価額によっているときは、課税上弊害がない限り、次によることを条件として認められる。
(1)当該株式の価額につき、当該法人が当該株式の発行会社にとって「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に「小会社」に該当するものとしてその例によること。
(2)当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は上場有価証券を有しているときは、「1株当たりの純資産価額」の計算に当たり、これらの資産については当該事業年度終了の時における価額によること。
(3)「1株当たりの純資産価額」の計算に当たり、評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと

今回の事例は、親族外承継であったが、事業承継対策の策定に当たっては各利害調整が重要となる。現経営者、既存株主、オーナー一族、従業員や金融機関など多くの利害関係者間の適切なバランスをとらなければならない。

この記事は 2009年 8 月 12日(水曜日) に投稿されました。
登録カテゴリー:変革の時(代表者ブログ).
RSS 2.0 Both comments and pings are currently closed.

Comments are closed.

カレンダー

2009 年 8 月
« 7 月   9 月 »
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

最近の投稿

カテゴリー