所得控除の見直し
商工会議所NEWSの11月号税務Q&Aに「所得控除の見直し」が掲載されましたのでご紹介します。
民主党政権が誕生し、そのマニフェストで中学生以下の子ども1人あたり月額2万6千円(平成22年度は半額の1万3千円)の子ども手当を支給することを公約している。その財源として「配偶者控除」「扶養控除(特定扶養控除、老人扶養控除は含まない。)」を整理し、高所得者に有利な所得控除を、税額控除、手当、給付付き税額控除へ転換するとしている。
また、給与所得控除については、特定支出控除を使いやすい形にしたうえで適用所得の上限を設ける等の見直しを行い、公的年金控除は最低補償額を120万円から140万円に戻し、かつ、老年者控除の50万円を復活するとしている。
Ⅰ 現行の扶養控除制度
納税者に所得税法上の扶養親族がいる場合には、別表1の金額の所得控除が受けられる。 扶養親族とは、その年の12月31日の現況で、次の四つの要件の全てに当てはまる人をいう。
(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)などであること。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(4) 原則として、青色申告者の事業専従者又は白色申告者の事業専従者でないこと。
Ⅱ 現行の配偶者控除制度
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、別表2の金額の所得控除が受けられる。控除対象配偶者とは、その年の12月31日の現況で、次の四つの要件の全てに当てはまる人をいう。
(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は除く)。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(4) 原則として青色申告者の事業専従者又は白色申告者の事業専従者でないこと。
なお、配偶者控除の適用がない方で、配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満である者については、配偶者特別控除が適用される場合がある。配偶者特別控除額は最高で、38万円であるが、配偶者の所得金額が増えると控除額が少なくなっていく。
Ⅲ 改正された場合の影響
民主党の試算では、中学生以下の子供がいる約1100万世帯が子供手当てを受け取るとされている。例えば「夫婦と子供2人(中学生以下)の片働き世帯」では、もともと税負担が少なく控除廃止の影響を受けにくい低所得者世帯や、現行の児童手当の支給対象から漏れていた8百~1千万円世帯については大きな恩恵を受けることになるが、中学生以下の子供がいない専業主婦世帯では、配偶者控除の廃止により増税となる。また、扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が満16歳以上満23歳未満の特定扶養親族や、満70歳以上の老人扶養親族は廃止対象から除くとされていたが、現状では財源不足が深刻であるので、今後の税制改正の動向については、特に注視していきたい。
(別表1) 扶養控除の金額
区 分 | 同居特別障害者である人 | 左記以外の人 | |
一般の扶養親族 | 73万円 | 38万円 | |
特定扶養親族 | 98万円 | 63万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外の人 | 83万円 | 48万円 |
同居老親等 | 93万円 | 58万円 |
(注1) 同居特別障害者とは、特別障害者である扶養親族で、納税者又は納税者の配偶者若しくは納税者と生計を一にしているその他の親族のいずれかと常に同居している人をいう。
(注2) 特定扶養親族とは、扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上23歳未満の人をいう。
(注3) 老人扶養親族とは、扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいう。
(注4) 同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と常に同居している人をいう。
なお、扶養親族が障害者の場合には、扶養控除の他に障害者控除27万円(特別障害者の場合には40万円)が控除できる。
(別表2) 配偶者控除の金額
区 分 | 同居特別障害者である人 | 左記以外の人 |
一般の控除対象配偶者 | 73万円 | 38万円 |
老人控除対象配偶者 | 83万円 | 48万円 |
(注1) 同居特別障害者とは、特別障害者である控除対象配偶者のうち、納税者又は納税者と生計を一にする親族のいずれかと常に同居している人をいう。
(注2) 老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいう。
なお、配偶者が障害者の場合には、配偶者控除の他に障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円)が控除できる。
(例) 老人控除対象配偶者が同居特別障害者に当てはまる場合の控除額
配偶者控除83万円と障害者控除40万円の合計123万円が控除できる。