~変革の時~ 
金融機関の事例研究会開催

本日17時より、某金融機関にて勉強会を実施した。
この勉強会は、福岡エリアの中堅行員を中心に相談事例を交えて月1回のペースで行っている。実際の相談事例や提案事例を基に金融機関や会計専門家として、これからどのように関与していくべきかについて、活発な議論が展開された。

今回のテーマも前回に引き続き、「事業承継事例」であった。

事業承継対策が全くなされていないで経営者が亡くなり、親族内に後継者がいなかったため、生え抜きの役員が経営を継続している事例を用いて、今後の対応策について議論を交わした。事例会社は、故社長を中心に、過去、長期間に渡り堅調な業績を継続してきたため、貸借対照表における純資産が大きく蓄積されており、その株価も資本金の何十倍にもなっている。後継者は、株式をほとんど保有していない状況であり、先代が亡くなった後、世界的な経済不況による景気低迷の影響で、当該会社の業績は著しく悪化している。このケースのように所有と経営が分離している状況下では、株主と経営者の利益が完全に相反しているため、会社経営が著しく不安定に陥る可能性が高い。

当然、事業や雇用を安全確実に継続させていくことを優先させるべきであるが、相続人である株主は、このまま現経営者に経営を委任したのでは、資産価値が大きく毀損していくのではないかと考えるだろう。株主が自己の利益を優先した場合、会社を清算し、その残余財産の回収に走るかも知れない。できるだけ早く株主との利害調整を行う必要があるだろう。

後継者はできるだけ3分の2以上の議決権を取得し、経営権を掌握すべきであるが、そのために必要な多額の株式取得資金を有していない。このようなケースでは、後継者が相続人より全ての株式を買い取るのではなく、発行会社による自社株買いを併用する方法が有効である。自社株式は議決権を有しないため、後継者はより少ない資金で会社の経営権を掌握することが可能となる。

なお、後継者が買い取る株式の価額は、相続税評価額でよいが、発行会社が買い取る価額は、原則、法人税上の時価となるため、税務リスク回避の観点から、法人税基本通達9-1-14における小会社方式を採用することが多い。
※法人税基本通達9-1-14
(注)法人が、上場有価証券等以外の株式(9-1-13の(1)及び(2)に該当するものを除く。)について「財産評価基本通達」の《取引相場のない株式の評価》の例によって算定した価額によっているときは、課税上弊害がない限り、次によることを条件として認められる。
(1)当該株式の価額につき、当該法人が当該株式の発行会社にとって「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に「小会社」に該当するものとしてその例によること。
(2)当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は上場有価証券を有しているときは、「1株当たりの純資産価額」の計算に当たり、これらの資産については当該事業年度終了の時における価額によること。
(3)「1株当たりの純資産価額」の計算に当たり、評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。

また、個人株主が相続等により取得した非上場株式に係る相続税を納付し、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに、発行会社へ売却した場合には、みなし配当課税の対象とされず、譲渡所得として申告分離課税(所得税・住民税合わせて20%の税率により課税)の対象となる。かつ、売却した株式に対応する相続税額に相当する金額を非上場株式の取得費に加算できるため、株式売却に係る譲渡所得が小さくなり、株式を売却した個人株主の税負担が軽減されるので、相続人である株主の理解も得やすい。

経営者や株主は、安易に会社を清算するのではなく、事業や雇用を安全確実に継続させていくを最優先させるべきである。他にも、新会社に対する事業譲渡、バイアウトファンドやM&Aなどによる方法も選択肢となりうるので検討されたい。事業承継対策は、早めの取り組みが重要であることは言うまでもないが、今回の事例では、あらためて会社を安定的に継続させていくことが、経営者における最も重大な責務であることを痛感した。

この記事は 2009年 11 月 13日(金曜日) に投稿されました。
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