~変革の時~
YCAビジネススクールⅢ 第17回
本日10時より、YCAビジネススクールⅢが開催された。
前段については、平成22年度税制改正の解説を行い、その後「結果を出すリーダーになる」スティーブン・R・コヴィー著を紹介し、不確実な時代を確実に生き抜くためにリーダーに求められるものをテーマに、活発な議論を交わした。
税制改正については、重要項目を中心に説明した。特に影響が大きいと思われる完全支配関係がある法人間取引等及び寄附金の取扱い並びに清算所得課税の廃止などについて、想定される留意点の解説を行った。
完全支配関係の判定においては、連結納税制度同様、持株比率5%未満の従業員持株会等が除外され、個人を頂点とする完全支配関係のある法人間では寄附金の特例制度の適用対象外になる。また、清算所得課税が廃止され通常の所得課税に移行された場合において、債務超過が見込まれるときは、期限切れ欠損金が使用できるとされているが、交際費などの損金不算入項目が多い会社や粉飾決算を行っている場合など、これまでの清算所得課税方式では課税が生じなかったケースでも債務免除益などについて課税が発生することが想定されるなど、判断ミスによる税務リスクが生じやすい。
今回は民主党政権になって初めての税制改正ということで、抜本的な改正項目が多く、具体的事案ではいろいろと判断に迷うことが多そうだ。今後、施行令や通達などの改正が矢継ぎ早に出されると思うが、情報収集を確実に行い、見落としや解釈の間違いがないよう特に注意していきたい。
次に、筆者の座右の書「七つの習慣」の著者スティーブン・R・コヴィー氏の新著「結果を出すリーダーになる」を紹介し、リーマンショック以降、顕在化してきた金融危機、通貨危機などの不確実な世界経済の中、リーダーはどのように考え、いかに行動しなければならないかをテーマに議論を展開した。
本著の中で、同氏は、現在の企業が抱える危険要因について、(1)実行力の欠如 (2)信頼の危機 (3)集中力の低下 (4)不安の蔓延の4つを掲げ、それらを回避する原則として、(1)完璧に最優先課題を実行する (2)信頼がもたらすスピードを活用する (3)時間と資源を集中する (4)不安を和らげる の4つを紹介している。各種経済指標は、景気回復の兆候を示しているが、多くの中小・中堅企業ではその実感は乏しい。このような閉塞感の強い時こそ、力強いリーダーシップが求められる。
後段のテーマは、「人事マネジメント」であった。
弊社では、中小・中堅企業の内部統制構築のためのコンサルティングを数多く実施しているが、ほとんどのケースで人事が適切に機能しておらずボトルネックとなり、成長の妨げとなっている。成果主義やMBOを前提とした人事考課等の積極な運用に取り組んでいるところはあるものの、本当にうまくいっている会社は皆無だ。経営者自身が、組織=ヒトのマネジメントの本質を十分に理解できておらず、表面的なテクニックに頼っているためではなかろうか。
組織戦略的には、共通目的・貢献意欲・コミュニケーションが不可欠であり、人事マネジメントにおいて適正な人事評価が最も重要となる。そのためには、適切な社員区分を行い、それぞれの役割(貢献)と責任を明確化し、採用・配置、適切な賃金規程の策定及び教育訓練等を実施しなければならないが、多くの場合、非常に曖昧なままだ。組織が大きくなるにつれて、分業化・専門化が必要となり、戦略的に組織運営するためには大幅な責任と権限の委譲が要求されるが、多くの中小・中堅企業では会社の重要機能や権限・責任などの大半が創業代表者等に集中したままである。また、権限委譲を行う場合には同等の責任も委譲されなければならないが、組織の仕組みが十分に理解されておらず、かつ十分な教育もなされないため、権利のみが台頭し、組織が脆弱化することが多いので要注意だ。