~変革の時~
経済環境について考える
本日、経済アナリスト藤原直哉氏のセミナーに参加した。講演テーマは、「世界と日本で今起こっていること」であった。
FRBは、11月3日に開いた米連邦公開市場委員会で追加金融緩和策を決定した。来年6月末までに追加的に6千億ドル(約49兆円)の米長期国債を購入し、市場に資金を供給する。保有する住宅ローン担保証券などの元本償還分で国債を購入する措置も継続し、景気回復とデフレ回避に向け、新たな量的緩和に踏み切るとともに、必要に応じてさらなる緩和措置も辞さない構えを示している。
一方、世界銀行のゼーリック総裁が11月8日付の英紙への寄稿で、新たな通貨協調体制の下でインフレなどの評価基準に金を採用すべきだと提案した。総裁はドル、ユーロ、円、ポンド、人民元の5つを基軸とする新通貨体制を提言し、代替通貨といわれる金も活用したうえで、通貨価値や物価を測る指標にするよう求めている。これを受けて、週明けのニューヨーク・マーカンタイル取引所の金先物相場は、一時1オンス=1410ドルに上昇し、史上最高値を更新した。金先物は米国の金融緩和観測から今夏ごろから上昇軌道に入り、ギリシャ、アイルランドやポルトガルなど一部の欧州諸国の債務問題への懸念とFRBによる追加緩和策の決定で上昇ペースが加速した形だ。世界的な通貨安圧力の中、各国通貨の信用が揺らぎ、世界的にハイパーインフレの予兆と言えるような変化が起きている。
財務省は、国債などの国の借金が9月末で過去最高の約909兆円になったと発表した。2010年度末には約973兆円に膨らむとしており、赤字国債発行による経済対策も限界が近いことを意味している。今後は、医療費、教育費、年金や公共事業の減少などを含む徹底した歳出削減と増税の議論が不可欠になってくるだろう。ビジネスパーソンは、これらの経済環境の変化が実体経済にどのような影響を及ぼすかを予測しながら、的確かつ迅速に適応していかなければならない。ギリシャ、イギリスやアイルランドなどで起きている事態は対岸の火事でなく、今そこにある危機だと認識すべきである。このような中、企業は著しい環境悪化に適応できる柔軟さ、筋肉質の財務体質及び継続的なイノベーションによる付加価値の持続的な競争力等が求められている。変化をチャンスと捉えて、積極的に環境適応を行った企業のみが確実に生き残っていけるのだろうと思った。