~変革の時~
YCAビジネススクールⅢ 第22回
本日10時より、YCAビジネススクールⅢが開催された。
前段における経営戦略等の発表については、某金融機関A社のM氏が行い、最後まで活発な議論が展開された。
A社は、他県に本店を置く優良な地方銀行である。今回、M氏は同社のSWOT分析を行ったうえで、東アジアにおける事業展開を視野に入れた経営戦略等について発表を行った。
M氏は、A社の競合要素の定義と競合比較を行い、SWOT分析により問題点及びその原因の抽出と解決に向けた課題について具体的に発表した。同社は、製造業に対する融資とリレーションに強く、東アジアでの事業展開においては他の地方銀行に対して圧倒的な競争優位を築いている。M氏は、様々な仮説を立てて同社の経営戦略を論理的に、かつ分り易く説明した。一行員の発想と思えない程その完成度は高く、同氏の優秀さには大変感心させられ、かつ同社の人材の底力を感じさせられた内容であった。
現在の厳しい経済環境下、激化する競争で国内のみの事業展開では、その危機を克服できない企業に多数直面している。だからといって経営資源が脆弱な中小・中堅企業の大半は、海外での事業展開は困難であろうし、カントリーリスクを軽減する戦略や戦術もほとんど持ち合わせておらず、海外進出する場合には金融機関等の外部アドバイザーに依存するしか道はない。今後もグローバル経済の進展は避けられず、中国、インドやインドネシアなど経済発展が著しい東アジアでの事業展開を抜きにして、我が国経済の更なる発展は見込めないだろう。弊社においても地元九州の中小・中堅企業の東アジアにおけるビジネス展開を支援できる体制構築を中長期計画に掲げており、数年後にはそれを実現している姿をイメージして日々努力を続けている。
後段は、先日行われた経済アナリスト藤原直哉氏のセミナー内容を基に、今後の経済見通しと中小・中堅企業がとるべき経営戦略について活発な討議を行った。
FRBは、来年6月末までに追加的に6千億ドル(約49兆円)の米長期国債を購入、市場に資金を供給し、必要に応じて更なる緩和措置も辞さない構えを示している。また、ユーロ圏ではPIIGS危機が囁かれ、ギリシャの財政破綻の後、国債の格付け引き下げが相次いだ。ギリシャは新興国以下になり、長期国債の金利はギリシャ12%、アイルランド9%、ポルトガル7%、スペイン5%などと資金調達環境が悪化し、国債の価額も暴落している。こういった背景で、世界的な資金が相対的に安全な「金」と「円」に流れ込み、円高基調はしばらく継続すると見込まれている。一方、世界経済を牽引する中国は人民元安を背景に著しい経済発展を続けているが、米国をはじめとする各国がいつまでもこの貿易不均衡と不公平を見逃すはずはない。いつかは不動産バブルの崩壊とともに一気に悪化してしまう脆弱さを、中国経済は抱えていることを常に念頭に置いておかなければならないだろう。
そういった中、世界銀行のゼーリック総裁が新たな通貨協調体制の下でインフレなどの評価基準に金を採用すべきだと提案した。総裁はドル、ユーロ、円、ポンド、人民元の5つを基軸とする新通貨体制を提言し、代替通貨といわれる金も活用したうえで、通貨価値や物価を測る指標にするよう求めている。世界的にハイパーインフレの予兆と言えるような変化が起きているのではないかと思う。
現在のような先の見えない不透明な時代に対しては、政治によるリーダーシップが求められるが、今の民主党政権の運営を見ていると何も期待できるはずがない。また、漁船衝突事件におけるビデオ流出、検察の証拠捏造事件や公安のテロ情報提供者の流出など官僚等の不祥事が立て続けに発覚してきているのを鑑みると、日本が長年かけて蓄積してきた腐敗政治も、内部から音を立てて崩れ去ろうとしているのではないかと思われて仕方がない。これから、明治維新に匹敵するようなパラダイム転換が現実に起ころうとしているのかもしれない。ただ、悲観ばかりしていても何の解決にもならない。どんなに大きな変化があろうと経済活動がなくなることは決してない。変化が大きい時代こそ、高潔な人格、強靭な肉体と精神、環境適応する能力とスキル、モチベーションが重要であるのは間違いないので、個人的にも組織的にも継続的に努力していきたい。