~変革の時~ 
企業研修開催

本日8時50分より終日、九電研修所にて九電グループの経営幹部研修を行った。
今回の参加者は約30名で、最後まで活発な議論が展開された。この研修会は、数年前より年一回のペースで筆者が講師を務めている。

九電グループは、誰もが知る九州のリーディングカンパニーで、グループ全体の年商1.5兆円、従業員数1万9千人を超える巨大企業である。当然、人材教育については、階層別に体系的な計画に基づいて実施されている。弊社が主に関与する中堅企業とは、人材開発の体制や規模も異なっており、大変参考になる。
中小・中堅企業では、ヒト、カネ、モノ、情報等経営資源のほとんどが大企業より大きく劣っている。その反面、経営者とスタッフの距離が非常に近く、人材開発等に迅速かつ柔軟に取り組めるなど競争優位を発揮することも可能であり、間違いなく最も注力すべき課題だ。

今回の研修テーマは、「役員のための会計セミナー」で、その内容は、「企業における内部統制のあり方」と「財務諸表の見方・考え方」であった。

内部統制の目的は、(1) 業務の有効性及び効率性 (2)財務報告の信頼性 (3)事業活動等に関わる法令等の遵守 (4)資産の保全の4つである。経営者は会社経理の望ましい姿について、どのような考え方や理解が必要なのかなど、具体的に解説を行った。

経営戦略的には、財務諸表について、次のような見方・考え方が必要となる。

(1)  企業を取り巻く利害関係者(ステークホルダー)との利害調整の視点を持たなければならない。原則として、利害関係者とWin-Win(又はNo Deal)の関係が前提である。財務諸表分析では、各取引関係の状況を強く意識すべきである。

(2) 財務諸表を戦略的に捉えると、貸借対照表(バランスシート)は、「長期的」に「意識的」に創るものであり、会社経営(中長期事業計画)と直結する。短期的に大幅な改善は難しいので、おおよそ5年後の望ましい状態を明確にイメージして、それを目指して毎期積み重ねていく必要がある。
損益計算書は、短期的な結果(意見)であり、収益に対応した費用・利益の配分バランスが重要となる。また、予算(売上・費用)と直結し、税引後当期純利益の累積が自己資本の厚みであり、会社の継続性を保証する。法人税、住民税及び事業税は会社が継続するためのコストであることを認識し、適切にコントロールする必要がある。
キャッシュ・フロー計算書は、収支結果(事実)であり、資産・負債の増減が影響する。経営的には、収入=収益、支出=費用の視点での運用が求められ、投下資金の回収意識を持つ必要がある。つまり、費用や設備取得等は投資であり、回収が前提となる。
 
(3) 金融機関(銀行)による債務者区分や格付けを重視しなければならない。非上場会社においてはガバナンス機能が働きにくいため、誤った経営判断を行う可能性が高い。金融機関の格付作業では定量評価や定性評価など合理的かつ科学的に分析がなされるため、年一回の健康診断だと考え、意識して戦略的に財務内容の健全化に努めるべきだ。

(4) 金融機関に高評価される会社を目指すべきである。戦略的には、個人財産の形成より、会社の財務体力増強を重視し、自己資本比率を上げていく経営が求められる。方法として、社長借入金の資本組入(DES)や増資等により、短期的に改善させることも可能であるが、基本は税引後当期純利益の継続的な計上が重要となる。そのため、法人税等は会社継続の必要経費(コスト)と捉えるべきだ。
融資姿勢も確実に担保主義から事業性重視へと移行してきているものの、保有資産の健全性や効率性については常にモニタリングを行い、資産価値の向上等に努めるべきである。
また、定性評価を上げるためには、新会計基準による積極的な開示と共に、定期的な事業計画や経営戦略等の報告を行って、支店長や担当者等とのコミュニケーションを重視していくべきであろう。

(5) 経営戦略を意識した配分バランスを重視すべきである。特に、売上高と付加価値、人件費、投資、在庫、設備や法人税等などについて、常に最適な配分を追及しなければならない。また、手許流動性、在庫回転率や交差比率、固定長期適合率など資産等の配分バランスも重要となる。

(6) 各財務諸表の関係を強く意識しなければならない。間接法のキャッシュ・フロー計算書においては、貸借対照表における現金等同等物以外の資産(売掛金、在庫、固定資産など)や負債(買掛金、未払金、借入金、引当金など)の増減が、キャッシュ・フローの増減に連動するため、経営的にはその期間比較が特に重要となり、損益計算書では見えない収支結果の原因を明らかにしてくれる。月次決算では、損益計算書と並行・重視して見ていくべきであろう。また、減価償却は支出を伴わない費用であるので、収支上はプラスであり、返済原資を見る場合には償却前利益(EBITDA)が重視される。

(7) 資金繰り表による収支管理を徹底する必要がある。財務諸表が主に過去の結果を表すものであるが、会社を継続させるためにはその血液であるキャッシュを円滑に循環させなければならない。会社倒産の危機を確実に回避するためにも、将来6ヶ月間程度の資金繰り表作成は経営者の責務と言える。
 
(8) 経営判断に必要な計数管理を徹底する必要がある。業種ごとに管理すべき計数は異なるが重要項目はできるだけ詳細に分解・分析し、会社の正確な状況把握に努めるべきであろう。
  

この記事は 2009年 8 月 28日(金曜日) に投稿されました。
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