~変革の時~
金融機関の事例研究会開催
本日16時より、某金融機関にて勉強会を実施した。
この勉強会は、福岡エリアの中堅行員を中心に相談事例を交えて月1回のペースで行っている。実際の相談事例や提案事例を基に金融機関や会計専門家として、これからどのように関与していくべきかについて、活発な議論が展開された。
今回のテーマも前回に引き続き、「事業承継対策」であった。
事業承継とは、会社経営を次の世代にバトンタッチすることで、「ヒトの承継」と「資産の承継」といった二つの側面が考えられる。前者は、経営者の資質の見極めや能力開発等を目的とし、後継者選びと教育及び経営理念等の継承対策が必要となる。後者は、経営権・支配権の確保が目的となり、事業用資産の継承、特に自社株の集中などの対策が必要となる。また、その株式購入や納税資金等の資金調達の対策も不可欠である。
事業承継は相続税対策と見られがちであるが、相続税対策は事業承継対策の一部に過ぎない。事業承継の最も重要な目的は、事業と雇用の継続性を確保することである。会社が安全に継続できるためには、後継者の資質やスキルに帰属する部分が大きい。また、現経営者に集中した信用力、営業力やノウハウ等を組織的に承継させることも重要な課題となる。
相続対策に偏重した対策は、会社の継続性を脅かすことになるので特に注意が必要だ。
今回の事例研究では、事業そのものの承継をテーマに議論を展開した。中小・中堅企業においては、会社規模が大きくなっていても組織的に運営していない場合が多い。組織化とは、端的に言えば、分業化とそれを管理統制する仕組みの構築である。分業化とは、権限(権限と責任)委譲、具体的には他者に任せることであるが、それに伴って管理・統制する仕組みが必要となるのである。従って、組織では、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を適切に管理統制していくことが重要な課題となる。
事業承継対策は、分業の度合、つまり権限委譲の程度により大きく影響される。創業者に集中した機能を後継者に円滑に承継させなければならないが、個人的企業では、営業や信用を含め、会社の重要な機能のほとんどが経営者自身に集中していることが多いため、事業承継を行うことは容易ではない。このような場合において、現経営者の機能すべてを承継させようとすると、後継者に相当高い能力・スキル・モチベーションが要求されるため、適任者がなかなか見つからない。
そこで一定規模以上の事業承継対策では、できるだけ早い時期から現経営者の有している機能の一部を他者に移転させ組織化を図り、後継者は戦略的意思決定中心で会社が運営できる状態を構築していくことが必要となる。経営者は、事業や雇用を安全確実に継続させていくを優先させ、親族内承継に固執せず、所有と経営の分離を前提とした承継や、従業員等へのバイアウトまたはM&Aも選択肢となりうることを肝に銘じておくべきであろう。