清算所得課税の廃止

商工会議所NEWSの平成22年6月号税務Q&Aに「清算所得課税の廃止」が掲載されましたのでご紹介します。

Q 平成22年度税制改正で、法人税等における清算所得課税が廃止されるそうですが、その内容を教えて下さい。

A 清算とは、会社を解散し消滅させる際に行わなければならない法的手続きのことです。具体的には、まず、解散決議を行い、その会社の土地や建物等の財産を全て現金化し、債務の弁済に充て、その残りを残余財産として株主等に分配することを目的にしており、清算結了することでその会社が消滅することとなります。
平成22年度税制改正において、会社を清算した場合における清算所得課税が廃止され、通常の所得課税方式に移行することになり、これまでの財産法的な方式ではなく、損益法計算原理、即ち益金の額から損金の額を控除して所得金額を算出する方法に改正されました。

Ⅰ 改正前の課税方法
会社を解散し清算する場合の課税方法は、改正前においては財産法的な方式になっており、残余財産確定時の残余財産の価額から、解散時の資本金等の額と利益積立金額の合計額を控除した金額を清算所得として課税対象としていました。従って、その金額がプラスにならない限り、法人税等が課税されることはありませんでした。
仮に会社の借入金について債務免除を受けるような場合でも、債務免除益が益金の額に算入されるというような継続企業に適用される税制とは異なり、解散決議後であれば、残余財産の価額が解散時の資本金等の額と利益積立金額の合計額より小さいケースでは、結果として課税の問題は発生しませんでした。

Ⅱ 改正点
(1) 改正後の課税方式
会社を解散し清算する場合の課税方法は、改正後においては損益法計算方式に移行しますがことになりますが、解散後の清算期間中に、債務整理等の目的で発生した債務免除益が益金の額に算入されることになり、課税の問題が生ずる可能性が生じます。改正後は残余財産がどの程度残るかどうかではなく、益金の額と損金の額との関係で、課税されるかどうかが決まることになります。
(2) 期限切れ欠損金の損金算入制度の拡充
改正前の課税負担とのバランスをとるため、会社が解散し清算中の各清算事業年度終了時において残余財産がないと見込まれる場合には、青色欠損金額等以外の欠損金額を損金に算入するという取扱いが拡充されました。残余財産がないと見込まれる場合とは、実質債務超過であることを意味し、実態貸借対照表において債務超過であることなどが該当するものと思われます。
(3) みなし事業年度の維持
改正によって会社解散前と後で所得計算の方法が同一となりますが、従前どおり、みなし事業年度は維持されることになります。
会社は解散し清算手続きに入ると、清算結了を目的に存続することとなり、会社本来の営利活動等が目的ではなくなり、法人の性格が変わるため、たとえ解散前と後で所得計算の方法が変わらなくなっても、そこで事業年度を分断するため、みなし事業年度が必要となります。また、解散時にみなし事業年度を設けることで、結果として、会社法における清算事務年度と法人税法における清算中の事業年度が一致することになります。
※ 平成18年の会社法制定時に、各清算事務年度とは「株式会社などが解散等をした日の翌日から一年間ごとの期間をいう」と定義されて、清算事務年度ごとに貸借対照表などを作成しなければならないと規定されました。そのため、法人税法上でも会社法の清算事務年度に対応するよう事業年度の定義を法人の損益などの計算の単位となる期間と規定し、解散によって生じるみなし事業年度の条文上における「解散の日の翌日から事業年度終了の日までの期間」を「解散の日の翌日から一年間(清算事務年度)終了の日までの期間」と読むことで、会社法の清算事務年度と法人税法上の清算中の事業年度は一致することになります。
(4) グループ法人税制との関係
完全支配関係にある親子会社間においては、子会社の解散により残余財産が確定した場合には、親会社はその子会社の未処理欠損金額を引き継ぐことが可能になりました。
その一方で完全支配関係にある法人間における有価証券の譲渡損益については、みなし配当が生ずる基因となる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合や他の内国法人の株式を有しないこととなった場合には、その有価証券の譲渡対価を譲渡原価とみなし、損益を認識することがなくなります。従って、完全支配関係にある親子会社間で、その子会社を解散した場合に、親会社において解散した子会社の株式消滅損が計上できなくなりますので特に注意が必要です。

Ⅲ 適用時期
 上記の改正は、平成22年10月1日以降の解散から適用されます。改正後において課税の問題が発生するような事案については、平成22年9月30日以前に解散決議を行うことで税務リスクの軽減を検討する余地もありますので、早急に対応すべきでしょう。

 

商工会議所NEWS 5月号税務Q&A
20100608

この記事は 2010年 6 月 8日(火曜日) に投稿されました。
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