粉飾決算の修正

商工会議所NEWSの平成23年1月号税務Q&Aに「粉飾決算の修正」が掲載されましたのでご紹介します。

Q 過去に粉飾決算を行っていたことにより法人税等を過大納付していた場合において、その後の事業年度で修正する際の税務上の留意点を教えて下さい。

A 金融機関等に自社の決算書をよく見せるために、架空売上の計上、棚卸資産の過大計上や費用の未計上などを行うことにより、利益を過大に計上する粉飾決算がしばしば見受けられます。その後の事業年度において、粉飾決算により過大に計上された資産を消却したり、未計上だった負債を認識して、そのまま損金算入してしまうと税務上は否認されますので、その修正には特に注意が必要となります。

(1) 税務上の原則的取扱い
減価償却費、評価損や貸倒引当金繰入額のように損金算入限度額が定められているものなどを除いては、税務上において計上すべき時期に益金又は損金に算入することが要求されています。従って、粉飾事業年度後において、その仮装によって生じた売掛金や棚卸資産を消却し、前期損益修正損などの費用に計上しても、税務上においてはその事業年度の損金として認められません。

(2) 更正の請求による修正
過去に行った過大申告の修正は、更正の請求又は更正の嘆願により、所轄税務署長等に減額更正を認めてもらうことで行う必要があります。なお、仮装経理に基づくものは、会計上、その修正経理をし、かつ修正経理をした事業年度の確定申告書を提出するまでの間は、税務署長は更正しないことができますので、前期損益修正損などの科目で損益計算書にて適切に処理する必要があります。

(3) 法人税等の繰越控除
その修正が単なる間違いによるときで、法人税等の還付が生ずる場合には、原則として減額更正後すぐに還付されることになります。
しかし、粉飾決算など事実を仮装して経理したものである場合において、税務署長がその法人税につき減額更正をしたときは、その仮装経理に係る法人税額は、(4)に掲げる場合を除き、直ちには還付されず、更正事業年度以後5年間に発生した法人税額から順次繰越控除することになります。なお、その5年間で控除しきれないときは控除未済額が還付されます。

(4) 仮装経理で直ちに還付される場合
① 過大申告をした事業年度終了の日から減額更正の日までに、残余財産の確定、合併による解散、破産手続開始決定による解散、連結納税の承認等、更生手続開始決定、再生手続開始決定及び特別清算開始の決定など一定の事実が生じているときは、更正後直ちに還付されます。
② 減額更正事業年度開始の日前1年以内に開始する事業年度の法人税でその更正の日の前日に確定しているものがあるときは、当該確定法人税額相当額までは更正後直ちに還付されます。

(5) 平成23年度税制改正案
昨年12月に公表された税制改正大綱において、次に掲げる改正項目が掲げられました。法律が成立すると主として平成23年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されることになりますので注意が必要です。
① 納税者が「更正の請求」を行うことができる期間(現行1年)を5年に延長する。
② 併せて、課税庁が増額更正できる期間(現行3年のもの)を5年に延長する。
③ 当該申告時に選択した場合に限り適用が可能な「当初申告要件」がある措置について、一定の範囲で、更正の請求範囲を拡大する。

〔図表1〕更正の請求とは、過去の申告について過大申告を行っている場合に、減額の更正を請求できる手続きで、次のとおり提出期限が定められています。
① 原則 法定申告期限から1年以内
② 特例 申告内容と異なる判決があったこと、修正申告、更正その他一定の事実が生じた場合には、その事実が起こった日や更正通知日等から2ヶ月以内
〔図表2〕更正の嘆願とは、更正の請求期限を経過したものについて更正を求める場合に、税務署長に対して過大申告の状態にあることを報告して、税務署長の職権で調査及び調査に基づく更正をしてもらうように働きかけることを言います。なお、法人税額等を増減させる更正期限は、原則として、法定申告期限から5年を経過する日までとなっています。

この記事は 2011年 1 月 6日(木曜日) に投稿されました。
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