~変革の時~
若手行員との勉強会開催
本日10時より、弊社において某金融機関の若手行員に対する勉強会を開催した。
前半は、先日亡くなったアップルの前CEOスティーブ・ジョブス氏が、2005年にスタンフォード大学の卒業式で行った記念スピーチについて紹介し、その後討議を行った。
スティーブ・ジョブス氏は1972年にリード大学に進学するがすぐに退学し、1976年アップルを創業している。その10年後にアップルを追放され、ネクストを創業、翌年ジョージ・ルーカスからピクサーを買収し、トイ・ストーリーやファイティング・ニモなどの大ヒット映画を生んでいる。1996年にアップル特別顧問として復帰した後、iMacをヒットさせ、2000年にアップル暫定CEOから正式CEOに就任している。2001年にはiPod発売し、2004年には膵臓がんの摘出手術を受けている。2006年にはディズニー社がピクシーを買収したことにより、ディズニー社の筆頭株主取締役になり、2007年にiPhone発売、2010年iPad発売、2011年iPhone4G発売の後、2011年10月死去したが、アップルの時価総額が一時全米第1位となった。同氏は紛れもなく世界有数の優れた経営者としての足跡を残しており、心から敬意を表したい。
ジョブス氏は、このスピーチで次の3つのことについて、自身の体験を通して人生の本質をうまく表現しており、何度聞いて心に響いてくる。まさに伝説のスピーチと言われる所以だ。偶然にも筆者自身の座右の銘とほぼその内容が重なっており、行動の選択基準として正しかったものと確信することができた。
一つ目は、「点をつなぐこと」
ジョブス氏の生みの母は未婚で大学生であったため、大学にやることを約束し、養子に出された。その後リード大学に進学するが僅か6ヶ月で中退する。スタンフォード大学と同じくらいの高額の授業料であったため、労働者階級の両親の蓄えはすべて大学の授業料に使われるが、それほどの価値を大学に見出せなかった。両親が貯めたお金を使い果たした時点で中退を決意し、万時問題ないことと信じることにした。その後、もぐりの学生として大学に顔を出していたが、興味を持てない科目の授業には出るのを止め、面白そうなものだけ出席した。その間は友達の部屋の床で寝泊りし、非常に貧しい生活を送った。リード大学は米国最高の文字芸術(calligraphy)の授業を行っており、その芸術的繊細さが大変魅力的だったのでそれを受講した。その10年後最初のマッキントッシュ発売し、美しい印刷技術を組み込んだ最初のコンピューターとなったが、もし大学を中退していなければ文字芸術の授業は受けていなかったし、マックが複数の書体やプロポーショナルフォントを持つことはなかっただろう。大学に居たときに先を見越して点をつなぐことは不可能であった。10年後に振り返ると、とてもとても明白だった。将来何らかの形で点がつながると信じなければならない。直感、運命、人生、カルマその他の何でも。現在は過去の行動の選択の結果である。この手法は一度も裏切ったことはなく、人生に大きな違いをもたらした。
2つ目は、「大切なものとそれを失うこと」
人生の早い時点でたまらなく好きなものを見つけて幸運であった。20歳のときにたった2人だけで実家の車庫からアップルを始め、10年後には4000人以上が働く20億ドル企業になった。しかし、マッキントッシュの販売攻勢をかけたが失敗し30歳のときに、アップルを首になった。人生全体の中心だったものを失いとても衝撃的であったが、振り返ると私に起こりうる最善のことであった。まだまだ、この仕事がたまらなく好きだったので、やり直す決意をしたことで、人生で最も創造豊かな時期へと解き放れた。NeXTという会社を起こし、その後アップルに買収され、同社のルネサンスの中核をなすようになる。また、Pixerという会社を起こし、素晴らしい女性と恋に落ち結婚する。アップルを首にならなかったら、これらのことは1つも起きなかった。たまらなく好きなものを見つけなければならない。仕事は人生の大きな部分を占めることになり、真に満足を得る唯一の方法は偉大な仕事だと信じることだ。だから見つかるまで探し続けなさい。妥協は禁物だ。
3つ目は「死について」。
毎日を人生最後の日であるかのように生きていれば、いつか必ずひとかどの人物になれる。今日が人生最後の日だとしたら、私が今日する予定のことをしたいと思うだろうかと33年間毎日自問している。その答えがノーであることが長く続きしすぎるたびに、私は何かを変える必要を悟った。自分が間もなく死ぬことを覚えておくことは、人生の重要な判断を助けてくれる最も重要な道具だ。ほとんどすべてのこと(他の人からの期待、プライド、恥や失敗に対する恐れなど)は死を前にしてすべて消えてしまい、真に重要なことだけが残る。約1年前に膵臓がんと診断され、3ヶ月~6ヶ月の命と告げられる。医者から家に帰って身辺整理をするよう勧められたが、その後、治癒可能なものと判明し、手術を受け全快した。これまでで最も死に接近した体験だ。死を望む者は誰もいない。しかし、それを免れた者はいない。そして、そうあるべきである。なぜなら死はほぼ間違いなく生命による最高の発明だからだ。皆の時間は限られているのだから他の人の人生を生きることで時間を無駄にしてはいけない。最も重要なことは、自分の心と直感に従う勇気を持つことだ。心と直感は本当になりたい自分をどういうわけ既に知っている。その他すべてのことは二の次だ。私が若い頃のバイブルであった全地球カタログの最終版で「ハングリーであり続けろ。愚かであり続けろ。」と締めくくっていたが、私は常にそうありたいと願っている。
後半は、渋沢栄一氏の著書「論語と算盤」の内容についてマインドマップを用いて説明し、その後、討議を行った。
渋沢栄一氏は、尊王攘夷の志士として活躍した後、幕臣としてフランスに渡り、帰国後に明治維新の官僚となっている。実業家としては王子製紙、東京海上保険など470社もの会社設立の中心的な役割を果たし、日本資本主義の父と呼ばれる。明治維新後の激変する日本経済の中で活躍されており、その考え方や理念及び行動原理は、これから起こるであろう我が国のパラダイム転換の中において取るべき思考や行動の指針となるのは間違いない。
熱い真心が必要であり、自分のやるべきことに深い趣きをもって努力すれば、心から湧き出る理想や思いの一部分くらいは叶うものである。自分を磨くのは理屈ではない。実際に行うべきものであり、現実の中での努力と勤勉によって知恵や道徳を完璧にしていくことである。精神面の鍛錬に力を入れつつ、知識や見識を磨き上げていくことである。自分を磨くことは、理想の人物や立派な人間に近づけるよう少しずつ努力し、精神、知恵や知識、身体も行いもみな向上するよう鍛錬することであり、挫折せずに続けられれば理想の人物レベルに達することができる。つまり、最も必要なことは人格を磨くことである。素晴らしい人格をもとに正義を行い、正しい人生の道を歩み、その結果手にした豊かさや地位でなければ完全な成功とはいえない。