~変革の時~
YCAビジネススクールⅢ 第37回

本日17時半より、YCAビジネススクールⅢが開催された。

前半の発表は、通販の事業プロデュースを中心としたマーケティングコンサルティング業を営むA社の代表取締役社長N氏が行った。同社は一貫して右肩上がりの成長を続けており、現在年商約20億円、従業員60人の規模まで拡大している。N氏は、今回の発表では10年後に年商100億円を想定した成長戦略の骨子について説明した。

A社は、経営理念及び経営ビジョンを重視し、その全社的な浸透のため人材投資にとても力を入れている。月に一度は全社員を対象としたビジネス発表会が行われ、定期的に著名な実務家やコンサルタントを招き、社内にてセミナーを実施している。A社社員の平均年齢は大変若く、積極的に新卒採用も行っている。会社の雰囲気は活気があり、モチベーションも積極性も高い。比較すると弊社スタッフは受動的な方が多いので、今後は能動的な人材となるよう採用や教育を重視し、適正なバランスを保っていかなければならないと思った。N氏が掲げる理念や目標は非常に明確で、組織的行動として機能していることから、高い確率でその目標が実現できるものと確信した。

後段は、組織マネジメントをテーマにて討議を行った。

組織とは、人間行動の集合体であり、2人以上の人々の意識的に調整された活動及び諸力の体系である。組織が成立・存続するためには均衡を実現することが必要条件となる。組織均衡とは、組織がその参加者に対して、継続的な参加を動機づけるのに十分な支払いを整えることに成功していること、すなわち、組織が存続に必要な経営資源の獲得・利用に成功していることを意味する。組織の参加者は、組織から誘因を受け、その見返りとして組織に対して貢献を行う。組織の参加者は、組織から提供される誘因が、組織から要求されている貢献以上の場合にだけ、組織への参加を継続する。参加者の貢献が、組織が参加者に提供する誘因を作り出す源泉である。貢献が十分にあって、その貢献を引き出す誘因を供与している場合のみ、組織は存在し続ける。

組織は、お互いの意見を伝達できる人々がおり、それらの人は行為を貢献しようとする意欲を持って、共通目的の達成を目指すときに成立する。つまり、均衡を実現するとともに、次の3要素を満たすことが必要条件となる。
① 共通目的が必要である。これは経営目的のことであり、経営者により明確にされ、組織構成員に理解され、容認されなければならない。共通目的の成立にあたっては、ドメインや組織文化とのかかわりが重要となる。
② 貢献意欲が必要である。貢献意欲とは協働意欲とも言われ、個人の努力を共通目的の実現のために寄与しようとする意思である。貢献意欲は、組織が提供する誘因が各個人において、組織に提供する貢献以上であると主観的に評価されたときに生まれる。
③ コミュニケーションが必要である。コミュニケーションとは、意思の伝達及び伝達経路である。コミュニケーションによって、共通目的に向けての個人の貢献意欲が引き出される。コミュニケーションが体系化されたものが組織構造である。

近年における組織論の変遷を見ると様々な理論や考え方が存在する。まず、テイラーの科学的管理法によって管理の原則が注目されるようになり、作業管理による標準化・単純化や課業管理による専門化・差別化が重要視されていた。その後、ファヨールの行政管理論によって、管理とは、計画し、組織し、指揮し、調整し、統制するプロセスと定義された。その管理原則は、分業、権威と責任、規律、命令の一元化、指揮の統一、個人利益の全体利益への従属、公正な従業員報酬、集権、階層組織、秩序、公正、従業員の安定、創意、従業員の団結とした。ウェーバーの官僚制理論に基づく管理の原則では、地位に基づいた権威構造と規則の体系、明確に専門化された分業が推奨された。メイヨーが作業関係より、人間の意欲、人間関係という部分が能率に大きく影響することを発見し、職場でのインフォーマル・グループの影響力を強調した。

最も有名なマズローの欲求段階説では、人間は以下に掲げる下位から上位の欲求を段階的に欲するとした。
① 生理的欲求(食物、水などの生存に関わる本能的欲求)
② 安全の欲求(安定した状態にしたい・危険を回避したい)
③ 所属と愛の欲求(集団や社会に所属適合し、愛情・友情を充足したい)
④ 尊厳の欲求(他者から尊厳されたい、他者より優れていると認識したい)
⑤ 自己実現の欲求(自己の向上、自己の潜在的能力を実現したい)

マクレガーのX理論・Y理論では、人には次の2つのタイプに分けられるとしている。
X理論→人間とは本来怠け者で監督による管理が必要である。
Y理論→人間とは本来自発的で目標による管理が有効である。

ハーズバーグの動機付け理論では、満足をもたらす要因(動機づけ要因)は、達成感、承認、仕事そのもの、仕事への責任や昇進などで、組織構成員の積極的態度を引き出すことから職務充実が効果的であるとしている。また、不満をもたらす要因(衛生要因)は、会社の方針、上司の監督、給与、人間関係、労働条件や作業環境などで、これらの改善は職務不満を防止するが、組織構成員の積極的態度を引き出すにはほとんど効果がないとしている。

マクレランドの欲求理論では、人には達成動機、権力動機、親和動機があり、各人がどの動機が強いかを把握することが重要であるとしている。ブルームの期待理論では、人には努力すれば評価されるという期待感があり、評価により補償され、その補償は自分の目標に合うと思うときに、モチベーションが高まるので、各個人の目標を正確に把握し、「努力-成果」、「成果-補償」、「補償-個人の目標」間関係を認識させることが重要だとしている。

アダムスの公平性理論では、従業員は、自分のインプット(教育水準、努力、職位など)によるアウトプット(給料、昇給など)を他人と比較しているので、その比率が公平性を持つと判断すると満足するとしている。ロックの目標設定理論は、目標という要因に着目し、モチベーションに及ぼす効果を探ることを目指したもので、困難な目標の効果、明確な目標の効果、フィードバックの効果を重視し、現在多くの企業でMBO(目標管理制度)として運用されている。

組織管理のための考え方として以上のような様々な理論が存在するが、どれかが一番正しいというわけではなく、それぞれの組織が置かれた環境や規模などにより、最も適切な理論の組合せを志向していくべきであろう。その場合には、組織構成員はいろいろな価値観を持つ者やタイプがいること、また組織の目的や目標によっても大きく状況が変わってくることが想定され、組織マネジメントが企業経営者の永久の課題となるのは間違いない。

この記事は 2012年 4 月 27日(金曜日) に投稿されました。
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