ゴルフ会員権の譲渡所得
Q ゴルフ会員権の譲渡所得に係る取得費の取扱いが変更になったそうですが、その内容を教えて下さい。
A ゴルフ会員権は、特定の会社の株主にならなければ、会員となれない会員権とその他の会員権とに区分されますが、これらの会員権を売ったときの所得は、いずれも譲渡所得として事業所得や給与所得などの所得と合わせて総合課税の対象となります。
国税庁が平成24年8月に公表した質疑応答事例では、個人が自主再建型法的整理により預託金が全額切捨てられたゴルフ会員権を譲渡した場合、その譲渡所得の金額の計算上、更生手続前のゴルフ会員権を取得したときのプレー権部分のみを取得費として控除するとしています。
(1) 従来の取扱い
預託金会員制ゴルフ会員権とは、契約上の地位であり、優先的施設利用権と預託金返還請求権をその内容とする譲渡所得の基因となる資産(事実上の権利)となります。これまで、自主再建型の再建が行われたゴルフクラブのゴルフ会員権を譲渡した際の譲渡所得の金額の計算において、その譲渡による収入金額から控除する取得費は、①会社更生法に基づく更生計画による更生手続等により、預託金債権の一部のみを切り捨てられた場合には、切り捨てられた損失の金額は認識せず、取得価額から減額しないものと取り扱い、また、②預託金債権の全額を切り捨てられた場合には、更生手続等により取得した優先的施設利用権のみのゴルフ会員権の時価相当額とされてきました。
(2) 今後の取扱い
上記(1)②の従来の取扱いの一部が以下のとおり変更されました。
預託金会員制ゴルフ会員権が会社更生法に基づく更生計画による更生手続等※によって、預託金債権の全額を切り捨てられたことにより優先的施設利用権(年会費等納入義務等を含みます。以下同じです。)のみのゴルフ会員権となったときであっても、その優先的施設利用権が、次に掲げる状況その他の事情を総合勘案し、更生手続等の前後で変更なく存続し同一性を有していると認められる場合には、その後に当該優先的施設利用権のみのゴルフ会員権を譲渡した際の譲渡所得の金額の計算において、収入金額から控除する取得費については、更生手続等前の預託金会員制ゴルフ会員権を取得したときの優先的施設利用権部分に相当する取得価額とする。
① 当該更生計画等の内容から、優先的施設利用権が会員の選択等にかかわらず、当該更生手続等の前後で変更がなく存続することが明示的に定められていること。
② 当該更生手続等により優先的施設利用権のみのゴルフ会員権となるときに、新たに入会金の支払いがなく、かつ、年会費等納入義務等を約束する新たな入会手続が執られていないこと。
※ 同等の法的効果を有する民事再生法に基づく再生計画による再生手続等を含みます。
(3) 所得税の還付手続
上記(2)の取扱いの変更は、過去に遡って適用することとされ、これにより、過去の所得税の申告の内容に異動が生じ所得税が納めすぎになる場合には、この取扱いの変更を知った日の翌日から2月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることにより、当該納めすぎとなっている所得税の還付を受けることができます。
更正の請求をする場合は、更生計画等上記(2)に掲げた内容が分かる書類を併せて提出する必要があります。なお、法定申告期限等から既に5年を経過している年分の所得税については、法令上、減額できないこととされています。
(図表)ゴルフ会員権の譲渡所得の計算方法
(1) 短期譲渡所得(所有期間が5年以内)
譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-50万円(特別控除額)=課税される金額
(2) 長期譲渡所得(所有期間が5年超)
{譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-50万円(特別控除額)}×1/2=課税される金額
(注1) 譲渡所得の特別控除の額は、その年のゴルフ会員権の譲渡益とそれ以外の総合課税の譲渡益の合計額に対して50万円です。これらの譲渡益の合計額が50万円以下のときはその金額までしか控除できません。また、(1)と(2)の両方の譲渡益がある場合には、特別控除額は両方合わせて50万円が限度で、(1)の譲渡益から先に控除します。
(注2)(1) ゴルフ会員権を売ったことにより生じた損失は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することができます。ただし、ゴルフ場経営法人が破産した場合など損益通算できない場合があります。
(2) ゴルフ会員権の譲渡が営利を目的として継続的に行われている場合には、その実態に応じて事業所得又は雑所得となります。