~変革の時~
IPOの意義

本日、関与先B社の取締役会に参加した。IPO (株式公開)を目指すB社では、ガバナンスの観点から、同社に出資を行っているベンチャー・キャピタルと弊社が、定時取締役会に参加し、変革を意識した活発な議論を交わしている。

この会議には、取締役や執行役員の他にも幹部候補の方も多数オブザーバーとして参加し、会社の財務数字や問題点・課題等を共有しており、透明性の高い組織創りと中間管理者層の意識・スキル向上に注力している代表者の姿勢が窺える。

通販を含む小売業を営むB社は、創業6期の中堅企業であるが、西日本・関東を中心に30拠点以上、年商30億円弱とこれまで順調に成長を果たしている。従業員も180人以上とかなり大規模に展開している。

B社代表者は、私と同学年で、開業時期もほぼ同時期であったことから、様々な面でいい刺激を受けている。継続的な成長と地元経済の発展、社会貢献を目指すという点で大変共感し、尊敬できる存在である。

IPOは、中小・中堅企業にとっては大きな夢や目標であった。しかし、会社の知名度向上等による売上増加・優秀な人材確保や内部統制構築等の期待はあるものの、株価低迷、上場会社の不祥事等による内部統制監査の導入や上場審査の厳格化などによりその魅力は薄れてきている。

なお、IPOのメリット・デメリットとしては次のようなものが考えられる。
(IPOのメリット)
(1) 会社の知名度向上及び社会的信用力・貢献力の増大
(2) 長期安定資金の調達と財務体質の強化
(3) 優秀な人材の確保
(4) 経営管理能力の強化
(5) 従業員持株制度の導入による福利厚生の充実
(6) ストックオプションによる人材確保と会社業績の向上
(7) 従業員持株機会の出現によるモラールの高揚と実力主義の浸透
(8) 株式の公正な価格形成と財産価値の増大

(IPOのデメリット)
(1) M&Aや株式の投機的取引が起こる危険性
(2) 株式事務の増大
(3) 企業内容の詳細な開示義務
(4) 公開費用、公開維持費用の負担
(5) 公表した事業計画達成のプレッシャー

最近では株価低迷により、上場してもPERが10倍に届かない企業が多く、十分な資金調達が困難であるのが現状である。また、PBRが1を下回る上場企業が続出しており、そのような企業では時価総額が解散時の資産を下回って評価されおり、常に買収リスクと隣合わせとなる。

近年において倒産した上場企業を見ると、景気後退の在庫調整局面に入ってからも株主からの利益達成圧力により、十分な在庫・借入金等の圧縮ができず、最終的に資金ショートして倒産しているケースが多い。本来であれば、在庫圧縮、事業撤退等により大きな損失を計上してでも会社を確実に存続させる経営判断をすべきである。それができなかったのは株式保有を利益追求の手段と考えている株主・経営者が多いためだろうか。

現在、全国的に非上場化の動きが加速している。本当の意味においてIPOの意義や効果を見直すいい機会かもしれない。

※(1) PBR(株価純資産倍率)とは、株価を1株当たりの純資産で割った値で、株価が1株当たり純資産額の何倍まで買われているのかを表している。
 (2) PER(株価収益率)とは、株価を1株当たりの年間税引後利益で割った値で、株式市場価格と会社の1株当たり利益との関係を表している。

この記事は 2009年 5 月 23日(土曜日) に投稿されました。
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