中小企業の事業承継対策 第2回
後継者教育

事業承継の方法には、(1)親族内承継、(2)従業員等への承継、(3)M&Aの3つがあるが、いずれの場合においても後継者の選抜及び教育が鍵となる。
M&Aでは、買い手企業の人材や管理能力等が重要となるが、それ以外のケースでは、長期的な視点で計画的に後継者教育を施さなければならない。

後継者等には、経営に必要な能力・知識を習得させるために、社内・社外での教育を実施する必要がある。

例えば、経験と知識の習得させるため、各部門をローテーションさせたり、経営に対する自覚を持たせるために責任ある地位に就け、現経営者の直接指導による経営理念の引継ぎ等を行うことが考えられる。また、責任感・資質の確認を行うため子会社・関連会社等の経営を任せることも有効である。
弊社においても、経営スキル等の習得と高潔な人格形成に寄与したいと考え、各種勉強会・研修会などを数多く実施している。

親族内承継においては後継者への株式等事業用資産の集中と後継者以外の相続人への配慮という2つの観点から検討が必要となる。
現時点で既に株式が分散している場合には、可能な限り買取り等を実施しておくべきであろう。後継者及びその友好的な株主への株式の相当数の集中が望ましく、株主総会で重要事項を決議するために必要な3分の2以上の議決権が目安となる。その場合、後継者の相続税負担が大きくなるため納税資金等の対策が、相続財産に占める自社株式の割合やその評価額そのものが大きい場合には、合理的に評価の引下げができるかどうかの検討も必要となる。
なお、生前贈与や遺言を用いる場合でも、他の相続人の遺留分による制限を考慮し、相続紛争にならないように意識しなければならない。

※ 株式・財産の分配の有効な手法
1.後継者への生前贈与
生前贈与は、後継者への財産移転の方法のうち、権利が確定されるため、最も確実な方法である。ただし、遺留分等民法上の問題については、十分に注意しなければならない。税務面では、納税猶予制度、暦年課税制度と相続時精算課税制度による税負担等を比較し、どの制度が有利であるか慎重に判断する必要がある。

2.遺言の活用
遺言を作成することで、後継者に株式等事業用資産を集中することが可能である。ただし、遺言はいつでも撤回できるため生前贈与ほど後継者の権利が確実でないことに加え、遺留分の問題や遺言の有効性をめぐるドラブルが起こることもあるので注意が必要である。
各種遺言の中でも、公正証書遺言が自筆証書遺言に比べ有効であるといえる。また、確実に遺言内容が実行されるという観点では、遺言信託の活用も選択肢の一つである。

3.会社法の活用
これ以上株式を分散させないためには、譲渡制限規定を置くことが必要である。また、平成18年5月に施行された会社法で活用の幅が拡大されている議決権制限株式、拒否権付種類株式(黄金株)、相続人に対する売渡請求等の活用も有効である。

この記事は 2009年 6 月 6日(土曜日) に投稿されました。
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