中小企業の事業承継対策 第7回 
事業承継税制の活用

平成20年度税制改正大綱において相続税の課税方式を、現行の法定相続分課税方式から遺産取得課税方式に改めることを検討するとしていたが、現行の方式が約50年の長きにわたり定着してきた制度で、その見直しは課税の公平性や相続のあり方に関連する重要な問題であり、更に議論を深める必要性があるなどの理由により、平成21年度での改正は見送られた。

また、中小企業の事業承継を円滑化するため、「相続税及び贈与税の納税猶予制度」が新設された。事業承継に悩む中小企業にとって非常に関心の大きい論点であり、今後、弊社においても選択肢の一つとして提案していくケースが増加するものと考えている。

しかし、当該制度により親族内承継における相続税負担等の抜本的な解決となる可能性はあるものの、いったん適用した場合には、第三者(親族外)へ事業承継を行う際には猶予された相続税等の納税が生じ、その後の事業承継の方法が大きく制限されるおそれがあるため、長期的な視点で慎重に判断しなければならない。

(1) 相続税の納税猶予制度
事業承継の障害の一つである相続税負担の問題を抜本的に解決するため、非上場株式等に係る相続税の軽減措置について、従来の10%減額からその事業承継相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した議決権株式等(相続開始前から既に保有していた議決権株式等を含めて、その会社の発行済議決権株式の総数等の3分の2に達するまでの部分)の80%納税猶予に大幅に拡充するとともに、対象が中小企業全般に拡大された。本制度は、中小企業経営承継円滑化法の施行の日(平成20年10月1日)以降の相続に遡って適用される。 

 

*図解1
(図中の下線部分は、平成21年度税制改正により決定した部分)

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(2) 贈与税の納税猶予制度
中小企業の事業承継を円滑化するため、非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度が導入された。

後継者(=受贈者。先代経営者の親族。)が、一括で自社株式の贈与を受けた場合には、当該後継者の贈与税の納税が猶予(贈与前から後継者が既に保有していた議決権株式等を含め発行済完全議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分)される。なお、基本的に、適用要件は相続税の納税猶予制度におけるものと同様(図中の下線部分は、相続税の納税猶予と相違する部分です。)であり、平成21年4月1日以降の贈与から適用される。

*図解2
(図中の下線部分は、平成21年度税制改正により決定した部分)

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この記事は 2009年 7 月 27日(月曜日) に投稿されました。
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