中小企業の事業承継対策 第8回 
会社分割の活用

弊社では、事業承継スキームを策定する場合に会社分割による組織再編を選択・提案することが多い。例えば、対象会社が食料品小売事業と不動産事業などの二つ以上の事業を営んでいる場合において、食料品小売事業は長男に、不動産事業は次男に事業承継するようなケースでは非常に有効だ。

また、不動産等を保有する資産持株会社によるグループ経営体制に移行するような組織再編スキームでは、会社分割による持株会社化が頻繁に採用されている。

会社分割とは、会社の事業の全部又は一部を他の会社に移転させる組織再編手法であり、商法改正により平成13年4月より導入された。事業譲渡とは異なり、合併の場合と同様に債権・債務の移転に債権者・債務者個別の同意は要求されず、包括承認による移転が可能となる。

会社分割により事業を承継する会社(分割承継法人)が新設会社の場合を新設分割という。どちらの事業を分割移転するかは各種許認可や商号等の問題を考慮し決定する必要がある。また、新設会社の株式については、分割型分割により分割法人の株主に剰余金の分配として割り当て、その上で各後継者に生前譲渡又は遺贈で移転するケースも多い。

分割法人が分割の結果、債務超過の状態になるような会社分割は、分割法人の財産に含み益がある場合等一定の場合を除き、認められていなかったが、平成18年の会社法施行により解禁となった。

会社分割を行うためには、取締役会の決議、分割計画書の作成、株主総会の特別決議や、一定の場合を除き、債権者異議申述公告及び催告などが必要となる。特に金融機関の借入金が大きい場合などは、事前に再編スキーム(枠組)の十分な説明を行い、確実に承諾してもらわなければならない。

企業組織再編のうち、一定要件を満たす適格分割の場合には、分割承継法人は移転を受ける資産・負債について帳簿価額で引き継ぎ、分割法人はその譲渡損益を認識せず、譲渡損益は繰り延べることになる。適格である吸収分割の場合には、特定資産譲渡等損失(含み損)について損金不算入となる場合があるので、特に細心の注意を払わなければならない。

また、一定の要件を満たさない非適格分割の場合には、分割承継法人は移転を受ける資産・負債について時価で引き継ぎ、分割法人はその譲渡損益を認識することとなるので、各資産につき分割時の時価を算定する必要がある。

分割による資産の移転は、適格・非適格を問わず、不課税取引となり消費税については課税されない。

*図解1
090801_1

 

 

 

 

*図解2
090801_2

この記事は 2009年 8 月 1日(土曜日) に投稿されました。
登録カテゴリー:事業承継対策.
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