グループ法人税制における譲渡損益調整資産の譲渡取引等

商工会議所NEWSの平成22年9月号税務Q&Aに「グループ法人税制における譲渡損益調整資産の譲渡取引等」が掲載されましたのでご紹介します。

Q 平成22年10月1日以降において、完全支配関係のある法人間(100%グループ内)で、一定の資産の譲渡取引等を行った場合における税務上の取扱いが変更されるそうですが、その内容を教えて下さい。

A 既報(平成22年3月号参照)のとおり、平成22年度税制改正により新たにグループ法人税制が導入されることになりました。平成22年10月1日以降、完全支配関係のある内国法人間譲渡損益調整資産(非適格合併による移転を含みます。)の譲渡取引等を行ったことにより生ずる譲渡損益については、その資産のグループ外への移転等の時にその移転を行った法人において計上する制度に変更されます。この改正により実務的な判断や処理が煩雑になるものと想定されますので、十分な検討と対策が必要です。

Ⅰ 完全支配関係がある法人とは?
原則として、発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係のある法人を言います。この株主の範囲には同族関係者、具体的には100%子会社や6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族などが含まれますから、直接的な資本関係がない場合でも完全支配関係があるとみなされる場合がありますので、特に注意が必要です。なお、完全支配関係の判定において、自己株式を除くほか、従業員持株会などの所有割合が5%未満である株式を除外するという規定が設けられています。

Ⅱ 譲渡損益調整対象資産とは?
固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産(売買目的有価証券、譲渡直前の帳簿価額1千万円に満たない資産を除きます。)が該当します。なお、不動産業者が保有する棚卸資産に該当する土地も含まれますので要注意です。

Ⅲ 税務上における主な留意点
(1) 譲渡時の取扱い
完全支配関係がある内国法人間で譲渡損益調整資産の譲渡等(非適格合併による移転を含みます。)を行ったことにより生ずる譲渡利益又は譲渡損失は、その譲渡事業年度においては損金又は益金に算入し、税務上はなかったものとして取り扱われます。
(2) 譲渡損益の戻入れによる実現
その後、譲受法人において譲渡損益調整資産につき、図表に掲げるような事由が生じた場合には、その譲渡法人でその事由の生じた日の属する譲受法人の事業年度終了の日の属する事業年度において、それぞれの金額を益金又は損金として戻入れ実現させることになります。
(3) 完全支配関係がある法人間の寄附との関係
今回の税制改正で法人による完全支配関係がある内国法人間の寄附金について、支出法人において全額損金不算入とするとともに、受領法人において全額益金不算入とされました。従って、法人による完全支配関係のケースでは時価以外で譲渡しても贈与課税(寄附金課税・受贈益課税)は生じなくなりますが、個人による完全支配関係のケースでは、従来どおり贈与課税の問題が生じますので、移転する資産の時価評価については注意が必要です。
(4) 譲渡法人の通知義務
譲受法人に対して、その譲渡後遅滞なく、その譲渡した資産が譲渡損益調整資産である旨などを通知しなければなりません。
(5) 譲受法人の通知義務
譲渡法人に対し、その譲り受けた資産が売買目的有価証券に該当する場合にはその旨、減価償却資産等に該当し、簡便法を適用する場合には、簡便法適用資産に係る耐用年数表などを通知しなければなりません。また、譲渡損益調整資産につき、譲渡損益計上事由が生じた場合には、その旨及び生じた日を、その生じた事業年度終了後遅滞なく通知しなければなりません。
(6) 包括否認規定
意図的に完全支配関係を外すような行為に関しては、同族会社又は組織再編に係る包括否認規定の適用対象とされることも考えられますから、株主構成が変更になる場合にはその経済合理性等について事前に十分な検討が必要です。

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この記事は 2010年 9 月 9日(木曜日) に投稿されました。
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