グループ法人税制における寄附等の取扱い

商工会議所NEWSの平成22年10月号税務Q&Aに「グループ法人税制における寄附等の取扱い」が掲載されましたのでご紹介します。

Q 完全支配関係のある法人間(100%グループ内)において、寄附金の授受が行われた場合の税務上の取扱いが変更されたそうですが、その内容を教えて下さい。

A 既報(平成22年3月号参照)のとおり、平成22年度税制改正により新たにグループ法人税制が導入されることになりました。平成22年10月1日以降、法人による完全支配関係がある内国法人間で授受される寄附金については、支出法人において全額損金不算入とするとともに、受領法人において全額益金不算入とされました。この寄附等の不算入制度は図表のD社やE社のように個人による完全支配関係がある法人間の寄附金には適用されませんので特に注意が必要です。

(1) 全額損金不算入の対象となる寄附金の額
寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産の贈与、経済的利益の供与等をした場合におけるその金銭の額若しくは金銭以外の資産の贈与時の価額又はその経済的利益の供与時の価額とされています。また、資産の譲渡対価や経済的利益の供与の額が時価より低く、実質的に贈与や無償供与をしたと認められる金額についても寄附金の額に含まれることになります。ただし、広告宣伝費、見本品費、交際費、福利厚生費、会議費や子会社整理損など一定のものについては、寄附金の額から除くこととされています。
(2) 株主法人における寄附修正
寄附修正事由が生じた株式を有する法人においては、税務上、一定金額を利益積立金に加減算し、その事由が生じた時の直前におけるその株式の帳簿価額にその金額を加減算することになりました。
(3) 譲渡損益調整資産を低額又は高額にて譲渡等した場合
税務上においては、完全支配関係のある内国法人間で譲渡損益調整資産(平成22年9月号参照)の譲渡取引等を行ったことにより生ずる譲渡損益についても、時価で行ったものとして算定し、その資産のグループ外への移転等の時にその移転を行った法人において計上することになります。つまり、時価と譲渡対価の差額については、寄附金として贈与側法人で損金不算入に、受贈側法人では益金不算入になりますので要注意です。
(4) 税務調査での修正
これまで税務調査において、グループ会社間での商品の販売、資産譲渡、貸付け、債権放棄、人員の供与等について、実質的な贈与や無償供与とされ、寄附金と指摘されることが頻繁にありました。今後は、寄附金と認定された場合でも、それが100%企業グループ間での寄附であれば全額損金不算入となり、寄附を受けた側においても全額益金不算入とされます。なお、受贈益の益金不算入となる法人側では、税務当局による所定の調査の後、更正の請求を行わなくても益金不算入として更正される見込みですが、今後の動向には注意が必要です。
(5) 株主法人に対する通知
今のところ新制度において、寄附金の授受があったことについて株主法人に対する通知義務は設けられておりません。しかし、寄附修正事由が生じた場合には、株主法人において保有株式の修正を行うため、何らかの通知を行う必要があるでしょう。
(6) 解散との関係
平成22年10月1日以後に法人を解散した場合には、100%子会社株式の消滅損について損金不算入とされる代わりに、一定の要件の下、その子会社の未処理欠損金を親会社が引き継ぐとする措置が設けられています。清算中に100%親会社から債務免除を受けた場合においては、その債務免除益が親会社側では寄附金、その子会社側では受贈益とされたときでも、子会社側の債務免除益は益金不算入となるため、結果として子会社では未処理欠損金を使用せずに、親会社がそのまま引き継げることとなります。
(7) 完全支配関係がある法人とは?
原則として、発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係のある法人を言います。この株主の範囲には同族関係者、具体的には100%子会社や6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族などが含まれますから、直接的な資本関係がない場合でも完全支配関係があるとみなされる場合がありますので、特に注意が必要です。なお、完全支配関係の判定において、自己株式を除くほか、従業員持株会などの所有割合が5%未満である株式を除外するという規定が設けられています。

〔図表1〕寄附等の不算入制度のイメージ
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この記事は 2010年 10 月 10日(日曜日) に投稿されました。
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